急性胃腸炎について                                                                                    

 
流行する時期は、冬でまだまだ先のことですが、備えあれば愁い無し。その際の適切な対応が、感染の拡大を未然に防げます。急性胃腸炎はおなかの中にウイルスが入って、吐いたり、下痢をする病気です。冬場に多く、11月頃と2月頃にピークがあります。感染したとき、ご家族の方はどのように対応するのが望ましいか、お話したいと思います。

1)急性胃腸炎って何?
乳幼児に多いですが、大人もかかります。原因ウイルスは、ロタウイルス、ノロウイルス、腸管アデノウイルス等です。突然の嘔吐で始まることが多く、だいたい1日くらいは、ムカムカが続きます。嘔吐には、2通りのパターンがあって、半日くらいの間に、一気に続けて何回も嘔吐することが多いのですが、1日1~2回くらいの嘔吐が2~3日続くこともあります。嘔吐に続いて下痢が見られることが多く、酸っぱい臭いのクリーム色をした下痢が見られますが、だんだん水のような下痢になります。下痢は、3~4日~1週間くらい続きます。赤ちゃんでは、下痢が長びくこともあります。発熱はあまり見られず、せいぜい1~2日くらいです。
✿ノロウイルスは、二枚貝や、生水から感染しますが、他の食品からも感染します。近年、老健施設や、保育園での集団発生が目立っています。

2)感染している方には・・・・
ウイルスについてはワクチンが無く、治療は輸液などの対症療法に限られます。止痢剤はウイルスを体内に停滞させるので、体に良くないと考えられるので、最近ではあまり使用しなくなってきています。
ぐったりして元気がない。顔色が悪く、うとうとする。口の中や舌が乾いている。尿量が少ない。泣いても涙が出ない。吐物に緑色の嘔吐が見られる。こういう時は脱水が強く、点滴治療などが必要ですので、様子など見ることなく、すぐに病院を受診しましょう。

3)看護する方は・・・・
下痢等の症状がなくなっても、通常では1週間程度長いときには1ヶ月程度ウイルスの排泄が続くことがあるので以下の注意が必要です。
✿便から移りますが、乾燥した吐物からウイルスが舞い上がって空気感染も します。
✿下痢が治まっても、1週間くらいは、便からウイルスがでていますので、 徹底 して手を洗いましょう


 嘔吐下痢が続くと・・・
 脱水症状が起きます。脱水になると、水分や電解質が失われます。電解質とは、ナトリウムとか、クロールとかいういもので、体内の水分バランスを保持し、体の調子を整える物質です。ナトリウムはNa、クロールはCl、一緒になるとNaCl、これは塩です。つまり、私たちの体内の水分は水と塩分などが適度なバランスで構成されていますので、脱水の時は単なる水だけではなく、塩分が入った水が必要なのです。
 市販されているイオン飲料もありますが、糖分が多い為以下のレシピで作れられることをお勧めします。
 「水1リットル+砂糖40g(大さじ4と1/2杯)+食塩3g(小さじ1/2杯)」です。後はよくかき混ぜて、飲みやすい温度に調整し、果汁で味付けをすれば簡単にできあがりです。


嘔吐物や便の処理について
 少量の嘔吐物や便でもうつる可能性が高いです。最大の予防策は「手洗い」です。流水で30秒は流しましょう。又タオルの共用はさけましょう。
嘔吐物や便の処理をする前に準備しておくものは使い捨てペーパー・使い捨てマスク・使い捨て手袋・ビニール袋・塩素系漂白剤(消毒液)です。嘔吐下痢の原因は全てノロウイルスではありませんが、ノロウイルスはアルコールや逆性石鹸では効果が期待できません。嘔吐下痢は全てノロウイスルのつもりであたられることをお勧めします。消毒液は10ℓの水に200mlのハイター(次亜塩素酸ナトリウム)を入れた物を使用します。
次に嘔吐物の処理方法をお話したいと思います。まず、準備したマスク・手袋を着用しましょう。嘔吐物をペーパーで拭き取り、ビニール袋に入れ袋の口を縛ります。消毒液を浸したもので拭いてしばらく放置しさらに水で拭きましょう。(消毒液は金属腐食性があります。金属部は特に水拭きを丁寧に行いましょう。)汚染物と消毒に使用したものを全てビニール袋に入れて袋の口を縛り、廃棄しましょう。処理が終了したら石鹸でよく手を洗い、最低30秒水で流しましょう。
嘔吐物・便の付着した衣類の処理については、先にお話した消毒液に付け置きした後洗濯するか、85℃以上1分以上の加熱後洗濯すると有効です。